日本でウクレレの奏者というと、誰を思い浮かべますか?

やはり「あぁ~やんなっちゃった」でお馴染みの牧信二さんのインパクトが強いですが、若い世代では知っている人もどんどん減っているかもしれませんね。

そうなると、中高年世代が次に思い浮かべるのはやはり高木ブーさんではないでしょうか。

80年代に一世を風靡した「ドリフ大爆笑」での、カミナリ様の格好をした高木ブーさんの姿は、誰もが知るところかと思います。

2000年代に入るとテレビではめっきり見かけなくなり、定期的に死亡説が流れていますが、もちろん今もご健在です。むしろウクレレ奏者として活発に活動されていらっしゃいます。

ドリフターズへの加入と、音楽人としての高木ブー

ドリフターズがもともとバンドだったのは有名な話です。

当時のバンド文化というのは、頻繁にメンバー交代があったり、一人のミュージシャンが複数のバンドに所属したりと、とにかくカオスな世界でした。

ドリフターズにおいても1956年の結成当時はまったく別のメンバーだったのですが、いかりや長介さんがリーダーに就任すると決まった際、荒井注さん、仲本工事さん、そして高木ブーさんを新メンバーとして引き入れたのです。

当時のドリフターズはバンド演奏がメインながらも、替え歌やカバー曲といったコミカルな演出を打ち出していました。それゆえ、演奏力よりも見た目のコミカルさを重視してメンバーを選出した、と後にいかりやさんは語っています。

そんななかでも、実は一番音楽的に実力があったと言われているのが高木ブーさんです。

高木ブーさんは1964年にドリフに加入するまで、すでに10年近くプロのバンドマンとして米軍キャンプなどで演奏していました。バンドではバンジョーやエレキギターを演奏していたそうですが、中学からウクレレを弾き続けており、その腕前はすでにかなりの知名度だったそうです。

その後、ドリフターズに加入後、ビートルズの前座も経験。伝説のバラエティ番組「8時だョ!全員集合」を経たのち、「ドリフ大爆笑」が放送されます。

このドリフ大爆笑のなかで、緑のアフロヘア―と全身タイツに、トラ柄のショートパンツ、というカミナリ様の扮装をした高木さんのコントが大ヒットし、この格好が彼のトレードマークにもなりました。

「全員集合」と「大爆笑」の放送終了後、テレビへの出演頻度は減ったのですが、実はこの期間に彼のウクレレ奏者としての腕前が注目されるようになったのです。

ウクレレ奏者としての高木ブー

1999年に、NHK教育テレビの「趣味悠々 高木ブーの今すぐ始めるウクレレ」に講師役として出演したことが、彼のウクレレ奏者としてのイメージに拍車をかけたのではないでしょうか。

この番組では彼のトレードマークでもあるカミナリ様の格好をして出演する一幕もあり、カミナリ様がウクレレを弾く姿はとても印象的です。

その後もウクレレ奏者としての活動に注力するようになり、2001年には「ブーズバー・ハロナ」というハワイアンバーを開きました。残念ながら2006年に閉店してしまったのですが、定期的にウクレレコンサートを開いたり、ウクレレ教室を運営するなど、彼のウクレレ活動の拠点にもなっていました。

そういった活動を通して、彼のウクレレ奏者としての側面が広く知られるようになっていた2008年、ハワイでも最高峰のウクレレの祭典、ワイコロア・ウクレレフェスティバルにプロ奏者として招待されます。

この頃からコメディアンとしての高木ブーより、ウクレレ奏者としての高木ブーのイメージを持つ人が増えてきたのではないでしょうか。

同2008年には、月間ハワイアン・ウェーブで定期連載もされています。

高木ブーさんの演奏スタイル

高木ブーさんの演奏スタイルは、ソロ演奏というよりも、昭和歌謡やハワイアンスタンダードの弾き語りカバーがほとんどです。

あまり派手なテクニックにこだわらず、力の抜けた穏やかな演奏を心がけているように見受けられます。

そんなことよりも何より目をひくのが、高木さんが近年愛用している、ダブルネックウクレレです。

ダブルネックウクレレとは4本弦の通常のウクレレと、8本弦のウクレレのボディが一体型になったウクレレで、体格の大きな高木さんですら大きく見えてしまうウクレレです。

高木さんはこの8本弦ウクレレを、弾き語りの伴奏音を厚くするために多用しているようです。

まだまだ勢力的に活動中

2015年には彼の演奏するハワイアン曲集のベストアルバム「 Life is Boo-tiful 〜高木ブーベストコレクション」も発売されていますし、ももいろクローバーとライブでコラボしたりと、勢力に活動を続けていらっしゃいます。

御年85歳ながらウクレレへの情熱は冷めることもないよう。

日本にウクレレという楽器を広めた立役者として、尊敬すべきウクレレ奏者のひとりです。