大事なウクレレをできるだけ長く、美しい状態のまま維持したいと思うひとは多いでしょう。
そんなとき気になるのが、ウクレレの保管方法についてです。
いつも同じウクレレを使っているのであれば、あまり気にかけることはないかもしれません。ですが、
- 長い旅行の間、ウクレレを家に放置する
- 2本目のウクレレを買って1本目をあまり使わなくなった
なんて場合は、どのように保管しておけばいいか気がかりです。
あるいは、高価なウクレレを普段からベストの状態で保管したい、というひともいるでしょう。
そんなときウクレレの正しい保管方法を知っておいて損はありません。さもないと大事なウクレレがいつのまにか取り返しのつかないダメージを負っているかも・・・
おどかすつもりは全くないのですが、基礎知識のひとつとしてウクレレの保管方法について解説します。
ウクレレは保管状態が悪いとこうなる
保管状態の悪さがもたらすウクレレへのダメージには、次のパターンがあります。
- 弦の張力に負け、ネックが曲がってしまう
- 多湿により、ネックが曲がってしまう or 金属パーツが錆びてしまう
- 乾燥により、ネックが曲がってしまう or ひび割れが起こる or フレットのバリが出る
ひとつずつ、その原因と対策について解説します。
弦の張力が原因のウクレレのトラブル
ウクレレの弦をビョンビョンとひっぱって見たことはありますか?「意外と柔らかいんだな」と感じた人も少なくないはず。
この弦がピンと張っている力のことを、張力またはテンションといいます。
このウクレレの弦の張力ですが、実は重さでいうと約15kgもあります。
15kgというと、3 – 4歳児の体重と同じくらいの重さ。言いかえるなら、弦が結ばれているペグとブリッジの間には、小さな子供がぶら下がるほどの力がかかっているということです。
そう言われると、放置していたらネックが曲がっても不思議ではない気がしますね。
ちなみに、ネックが曲がることを一般的に「ネックが反(そ)る」という言い方をします。
そして、ネックの反りには「順反り(じゅんぞり)」と「逆反り(ぎゃくぞり)」の2種類があります。下の画像で見てみましょう。
弦の引っ張る力で順当に反ってしまうのが「順反り」、それとはなぜか逆に反ってしまうのが「逆反り」と覚えるとカンタンです。
しっかりチューニングされたウクレレをそのまま放置すると、ネックが弦の張力に耐えきれず、順反りが起きてしまいます。
そしてウクレレは一度ネックが反ってしまうと、後から治すことはできません。演奏に支障をきたすほどの反りが発生したら、残念ながらそのウクレレには別れを告げるしかありません。
弦の張力による順反りの対策
弦の張力による順反りを防ぐためにできるのはひとつだけです。「使わないときは弦を緩めておく」これに限ります。
緩めておくと言っても、1〜2音ぶんで大丈夫です。完全に張力をなくすことに意味はないので、ブヨブヨになるまで緩める必要はありません。
また練習のたびに毎回弦を緩める必要もありません。
ちょっとおどろかすような言い方もしましたが、最近のウクレレはかなりしっかり作られています。ちょっと弦をそのままにしておいたからといって、数日でネックが反ってしまうことはないので安心してください。ウクレレを手に取るたびに弦を緩めていたら、練習がおっくうになりますしね。
ただし数ヶ月や数年という長い期間放置すれば、ネックが反ってしまう可能性は十分にあります。ときどきネックの様子を気にしながら、長期間使わないときは弦を緩めておくようにしましょう。
湿度が及ぼす、ウクレレへのダメージ
弦の張力よりもやっかいなのが、湿度です。
ウクレレは木でできています。木は常に空気中の水分を吸ったり吐いたりしていて、そのたびに膨張したり縮んだりを繰りかえしています。
つまり、ウクレレをあまりに湿気た環境や乾燥した場所においておくと、本体に使われている木材が変形し、歪みが発生してしまうのです。
多湿により、ウクレレのネックが曲がってしまう
例えば、湿度が高い場所にウクレレを放置すると、ネックは逆反りを起こします。
ネックの裏(左手で握る側)と表(指板)をくらべると、表(指板)のほうが塗装が薄いため湿度の影響を受けやすくなっています。そのため、同じ湿度であれば表側のほうが膨張しやすく、逆反りになってしまうのです。
ネックが逆反りを起こすと、弦とフレットのあいだのすき間が足りず、音がきちんと出ません。弦がフレットにふれることで、音がビビる・途切れるなどの現象がおきてしまいます。
もちろんそれだけでなく、湿気は金属パーツのサビや、指板のカビ発生にもつながります。
このようなことが、
- ウクレレを加湿器の近くで保管していた
- 梅雨のジメジメした室内で放置していた
といったときに起こってしまいがちです。加湿器からは距離をとる、あまりに湿度の高い日はエアコンのドライをつける、などして防ぎましょう。
乾燥により、ネックが曲がってしまう
湿度が高すぎてもダメですが、乾燥しすぎてもウクレレには良くありません。乾燥した状態でウクレレを放置すると、今度はネックが順反りを起こしてしまいます。
ネックの表は湿度の影響を受けやすいと言いました。空気が乾燥していると、指板の木が含んでいる水分が減っていき、体積が縮んでしまうのです。
乾燥はその他にも深刻なダメージを・・・
さらに乾燥がすすむと、ネックの反り以外にもウクレレに影響がでてきます。
例えば、フレットのバリがそのひとつです。
フレットのバリとは、フレットの端がネックから少しだけ飛び出してしまい、演奏する指に引っかかってしまう状態のこと。
空気が乾燥しているとき、指板の木は縮みますが、フレットは金属でできているので縮みません。このギャップにより、バリが出てしまうのです。
また、乾燥は指板やボディのひび割れも引き起こします。
カラカラに乾いた木片に、ヒビが入ってすき間ができているのは見たことがあるでしょう。ちょうど同じことがウクレレの指板やボディにも起きてしまうのです。こうなってしまうと、もうどうしようもありません。
ウクレレに最適な湿度
湿度が高くてもダメ、低すぎてもダメ、じゃあどうすればいいのさ。という気分になってしまいますね。
まず、そもそもウクレレに最適な湿度とはどのくらいなのでしょうか。下の表をご覧ください。
湿度
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環境
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症状
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60% |
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50% |
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快適な環境
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40% |
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30% |
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20%以下 |
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ウクレレに最適な湿度は、およそ40 〜 50%です。これは人間が快適だと感じる湿度とほぼ同じだそうです。
しかし悲しいかな、四季豊かなこの日本においてはこれより多湿なことも、乾燥していることもあります。
そのような環境下でウクレレの湿度を一定に保つにはどうすれば良いのでしょうか。
ウクレレの湿度対策はこうしよう
どのような環境においても、ウクレレの湿度を一定に保つ方法。
それは、ハードケースと、湿度調整剤の組み合わせです。
ハードケース
持ち運びに便利、という理由でウクレレの保管にはソフトケースを使っている人も多いでしょう。しかし、ウクレレの保管という点からいえば、ハードケースのほうが優秀です。
単に物理的な破損から守ってくれる、というだけではありません。ハードケースは密閉性が高く、ケースの中は外気の湿度や温度に影響されにくいのです。
ハードケースに入れてしまっておくだけでも、ヒビ割れや過度の反りといった最悪のケースはまぬがれるでしょう。
KC ウクレレ ハードケース ソプラノ用 UC-100
しかし、ハードケースだけではまだ完璧とはいえません。長期の保管には多少の不安が残ります。
そこで登場するのが、湿度調整剤です。
湿度調整剤
湿度調整剤とは、湿度が高いときには水分を吸収し、乾燥しているときにはその水分を吐き出す、というスグレモノ。
これをハードケースの中に入れておくだけで、ケース内部を常に楽器に最適な湿度に保ってくれます。
ヴァイオリンやギターといった弦楽器はほとんどが木製で、中には100年以上前に作成されたヴィンテージもたくさんあります。そういった楽器を後世まで美しい上程のまま残すために、各楽器メーカーがこのような湿度調整剤を製造しています。
あなたの大事なウクレレにもぜひ活用してあげましょう。
フェルナンデス DR DRY 湿度調整剤 楽器用
ウクレレの保管方法まとめ
以上をまとめると、ウクレレを良い状態で保管するための一番カンタンな方法は、
- 弦をすこし緩めて、湿度調整剤といっしょにハードケースで保管する
ということになります。
数日以上使わないときや、湿度の高い/乾燥した部屋に放置して外出するときなど、必ず上記の方法で保管するようにしましょう。
長く美しく使い続ければ、いつかあなたのウクレレにもヴィンテージプレミアがつくかも?
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