ストロークに慣れたら、次に挑戦してみたくなるのがアルペジオです。
アルペジオとは、右手の指をバラバラに動かして流れるように弦を弾くテクニックのこと。
難しい呼び方だと「分散和音」と言われたりもしますね。言い方は難しいですが読んで字のごとく、「和音(コード)」の構成音を「分散」しながら弾く、という意味です。
わかりやすく言いかえると、
- 左手は普通にコード(和音)を押さえる
- 右手は、ストロークのように一度に複数の弦を鳴らすのではなく、弦を1本1本異なる指で順番に弾く
- それぞれの音(弦)の余韻は伸ばしたまま切らずに、次の音と重ねる
というのがアルペジオのポイント。
文字だけではイメージがわかないかもしれませんので、動画で簡単なアルペジオの例を弾いてみました↓
【演奏動画】(0:08〜0:28)
アルペジオは穏やかで情緒のあるサウンドが特徴です。聴いていて魅力的なのはもちろんのこと、実際に弾いてみても楽しい演奏スタイルです。
この記事では初めてアルペジオに挑戦する方に、アルペジオが簡単になる基本のフォームと、おすすめの4つの練習パターンを紹介します。
右手のフォーム
まずは弾き始める前の段階、右手のフォームについて知っておきましょう。
先に述べたとおり、アルペジオでは右手の複数の指をバラバラに動かしながら、それぞれ違う弦を弾かなければなりません。こう聞くとなんだかとても難しく思えますが、どの指でどの弦を弾くかあらかじめ決めておけば意外とすんなり出来ます。
下の写真を見てください。
例えば写真のように、
- 1弦 → 中指
- 2弦 → 人差し指
- 3弦、4弦 → 親指
という風に決めておけば、音を出すたびに「次の音はどの指で弾こう」なんて考えなくてすみますよね。
指先を少し動かすだけで手や腕は動かす必要がないので、右手全体も安定します。
さらに写真のように小指をボディにあてて支えてあげれば、他の指はもっと動かしやすくなります。
ちなみにこの「どの指でどの弦を弾くか」の組み合わせに決まりはありません。
例えば
- 1弦、2弦 → 人差し指
- 3弦、4弦 → 親指
や、
- 1弦 → 人差し指
- 2弦 → 中指
- 3弦 → 薬指
- 4弦 → 親指
といった弾き方もあります。
どれかに限定する必要は全くなくて、「このフレーズはこの組み合わせのほうが弾きやすいな」とか「自分はこの指使いが苦手だから、この組み合わせはやめておこう」というふうに、柔軟に変えていいものだと思います。そのほうが演奏の幅も広がりますから。
ただし今回のテーマは「初めてのアルペジオ」。それほど難しくなく、いろいろなフレーズで応用の効く、
- 1弦 → 中指
- 2弦 → 人差し指
- 3弦、4弦 → 親指
の組み合わせからマスターしていきましょう。
それではもう一度、写真で右手のフォームを確認しておきます。
指の組み合わせ以外のポイントとしては、
- ストロークの時よりも少しだけブリッジ寄りを弾く(=テールが二の腕につかない)
- 手首は曲げず、手の甲が肘からすっと伸びる
- 親指はすっとまっすぐ、弦に寄り添うように
などがあります。
写真と自分の手を見比べてみながらひとつずつチェックしてみましょう。
アルペジオで開放弦を弾いてみる
それでは実際にアルペジオを弾いてみます。
まず左手のことは置いておいて、右手の動かし方から覚えるのが先決です。コードは押さえず、開放弦を使った3つのパターンで練習してみましょう。
- パターン①
【演奏動画】(0:28〜0:58)
まずパターン①です。一番音の低い3弦から音が始まるため、コード感がわかりやすいフレーズです。
上のTAB譜でも線の左端にも書いてあるように、
- 1弦 → 中指
- 2弦 → 人差し指
- 3弦 → 親指
のポジションで、はじめから右手をかまえておきます。
(TAB譜の読み方についてはこちら→「ウクレレは楽譜が読めなくてOK。便利なTAB譜の読み方をさくっと解説(初級編)」)
そのまま、3(親)→ 2(人)→ 1(中)→ 2(人)→ 3(親)→ 2(人)→ 1(中)→ 2(人)、と繰り返し弾いてみましょう。
親指はダウン、そのほかの指はアップで弾いてください。「指先で弦を少し押そうとしたら、するりと弦の上をすべって離れた」というのが、弦を弾(はじ)くときのイメージです。
アルペジオではそれぞれの音の余韻が美しく重なっていくのが重要。いちど動かした指が他の弦に触れて、音の余韻が途切れたりしないように注意してください。
- パターン②
【演奏動画】(1:00〜1:43)
今度は4弦も使います。親指1本で、4弦と3弦を担当します。
ひとつひとつの音の大きさが同じくらいになるように意識しましょう。とくに1弦(中)の音が小さくなりがちですが、音量をそろえることでより美しく聴こえます。
一定のリズムで弾くことも美しく聴かせる大切なポイントです。必要であればメトロノームを使ってください。ゆっくりのテンポから少しずつ慣れていくと良い練習になりますよ。
- パターン③
【演奏動画】(1:43〜2:30)
このパターンは、フレーズの一番最初の音が1弦と4弦の2本を同時に弾くようになっています。
このように、フレーズのなかでアクセントを置きたい場所に別の音を重ねて弾くと、リズムが強調されて洗練されたサウンドになります。
親指が4弦と3弦を連続して弾くことになるので、力加減が難しいかもしれません。指先の動かし方だけでなく、実際に鳴っている音に意識をむけながら練習したほうが上達が早まります。
以上、この3つのパターンでなんとなく右手の動かし方がわかりましたか?
次の章ではコードにもチャレンジしますが、まずは慣れるまで右手だけで練習するのがおすすめです。
ちなみに
今回、上の画像でいうところの①番のように、TAB譜の端に指と弦の組み合わせを書きました。ところが、楽譜によっては②番や③番のような書き方をしていることもあります。
②番は簡単なので説明の必要はないでしょう。1音ごとにどの指を使うかをていねいに書いてくれています。実際に弾いてみると、指と弦の組み合わせはずっと同じひとつの形、ということがわかりますね。
③番はなにやら見慣れませんね。これは指をアルファベットで記したもので、英語圏の国で使われる表記です。p=親指、i=人差し指、m=中指、a=薬指に相当します。海外のTAB譜で見かける表記です。
あくまで参考までに。
それでは次はアルペジオでコード演奏にチャレンジしてみましょう!
アルペジオでコードを弾いてみる
- パターン④
【演奏動画】(2:32〜3:33)
CとG7をアルペジオでくり返し弾くフレーズです。右手はパターン②と同じですね。
TAB譜上では単音が連続しているので一見難しそうに見えますが、実際は小節の最初に左手でコードを押さえてそのまま。右手は例のポジションにするだけです。
ただし注意点があって、コードの変わるタイミングでは出来るだけ素早く、確実にコードチェンジする必要があります。
くり返しになりますが、アルペジオは1本1本の弦をしっかり鳴らさないといけません。ストロークでは、ちゃんと鳴らせていない音があっても他の音が鳴っているのである意味ごまかしがきいてしまいます。でもアルペジオの場合、左手でしっかり弦を押さえられていないと音が途切れてカッコ悪いことになるのです。これがなかなか難しい。
ここでちょっとしたコツを紹介します。
アルペジオでは、コードチェンジの時に左手のすべての指をいちどに移動させる必要はありません。
たとえば上のCとG7のコードフレーズをストロークで弾こうと思うと、小節の最初(コードが変わるところ)で、全ての指を一気に移動させますよね。そうしないと一つ目の音符がきちんとしたコードの音にならないからです。
でもアルペジオの楽譜をみてください。
小節のはじめに鳴らす音は、CもG7も1弦だけです。つまりCのはじめには1弦3フレットさえ押さえられていれば他の弦はどうなっていても良いし、G7のはじめには1弦2フレットさえ押さえられていれば、別に2弦や3弦は押さえれていなくたって聴こえる音は変わらないわけです。
むしろ「前の音の余韻を伸ばして、次の音を重ねる」というアルペジオの基本からすれば、一つの弦を押さえたら次にその弦を弾くタイミングぎりぎりまで音を伸ばした方が良い場合もあります。
ここで言っていることをわかりやすく動画にしてみたので、実際に見てみましょう。
【演奏動画】(3:33〜4:24)
2弦・3弦を押さえたり離したりするタイミングが1弦とズレているのがわかりますか?弦を弾く直前に指を動かしていますよね。
こうすると左手の指を3本一気に動かすよりもずっと安定して弦が押さえられるので、動画の後半で弾いているような高速アルペジオでも割と簡単にできてしまうのです。
コードの響きによってはやらない方がいいこともありますが、たいていのアルペジオフレーズはこのテクニックを使うだけで一気に簡単になります。とくにコードの変わり目が難しいアルペジオフレーズに挑戦するときは、ぜひとも試してみてください。
まとめ
アルペジオを弾くときのポイントをおさらいしておきましょう。
- 右手は、どの指でどの弦を弾くかをあらかじめ決めておく
- 音の余韻が美しく重なるように
- ひとつひとつの音の大きさは均一に
- 正確なリズムで弾くのも大事
- 左手の指は使う順に押さえてもよい
いかがでしょうか。ちなみに「ひとつひとつの音の大きさは均一に」とありますが、アルペジオが上達してくれば意図的に音量に差をつけて、演奏に表情を持たせるのももちろんOK。
慣れるまでは頭と指がこんがらがりそうですが、スムーズに弾けるようになるととても心地いい演奏方法です。まずはここで紹介した右手のパターンを練習してみて、自分の知っている曲や他のコードで試してみるのも良いですね。
慣れてきたら、「【ウクレレ】アルペジオのいろいろなフレーズ(*準備中*)」で他の練習フレーズも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。